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1-16 子供の歯列矯正のまとめ(開始時期、装置の選択、医院の選択)

このコラムでは、子供の矯正治療について色々と書いてきました。ここらで少しまとめておきたいと思います。

①子供の矯正治療の開始時期について

成長発育を利用できる小学校半ば(小学校中学年)くらいからの治療開始が望ましいと考えています。小さな乳歯が大きな永久歯に生えかわり始める6歳頃に、歯列不正に気付くことが多いのですが、この時期は自然な顎の拡大が期待できるため、治療開始には少し早いです。かといって、全てが永久歯に生えかわってしまってからだと、成長発育を利用しにくく、永久歯を抜歯しての治療の可能性が高まってしまいます。

「早く始めれば早く治療が終わる」と思いがちですが、キレイな永久歯列の完成をゴールと考え、その時点からさかのぼって治療開始までを治療期間と考えると、治療開始が早ければかえって治療期間が長くなる可能性が大きいと理解していただきたいと思います。また、「乳歯が全て永久歯に交換するまで待つ」には、何か良い見通しがあるわけでなく、単なる判断先延ばしである可能性もあります。

矯正治療を避けるためなのか、位置異常の永久歯に隣接する乳歯を早めに抜歯して、永久歯が自然と良い位置に戻るような処置をされる場合があります。このような処置をしても、顎全体が大きくなるわけではないので、問題を先送りしているだけなのです。また、乳歯といえど顎の発育に関係しているため、早めに抜くことにより歯列が大きくなりにくいという新たな問題を引き起こす可能性すらあります。

《参照:子供の矯正治療の開始時期と終了時期について

②子供の矯正治療装置

小学校半ば(混合歯列期中期)から治療に使われる装置は、主に、拡大装置になります。歯列を拡大することにより、乳歯より一回り大きな永久歯が並ぶスペースを確保することにあります。拡大装置には、取り外せるものと取り外せないものがあります。確実性のあるのは、取り外せない装置なので、矯正専門医院では、取り外せない装置が好んで使用されています(左図;クォードヘリックス)。

《参照:子供の矯正治療装置

スペースが確保できても、歯がキレイに並ぶ保証はなく、永久歯列が完 成した中学生以降(永久歯列期)にエッジワイズ装置で、個々の永久歯を理想的な位置に動かします。右図はエッジワイズ装置の一種で、『セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)』といいます。セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)は、痛みが少なく治療期間が短いと評判の装置です。

以上でご説明した、混合歯列期の拡大治療をⅠ期治療、永久歯列期のエッジワイズ治療をⅡ期治療と呼び、2段階の治療でもって歯を動かす治療が終了となります。ただし、歯が元に戻らないように、保定装置(左図;ベッグタイプリテーナー)を使用する保定期間もその後に必要となります。

《参照:歯は元に戻るの?

③治療医院の選択

口コミやインターネットの情報で、医院を選ばれる方が増えています。矯正治療は非常に専門性の高い治療であるとの認識からだと思われます。ただしネット上の情報は玉石混交ですので、正しい判断をするのはかえって難しくなっているかもしれません。つい先日、グルメ情報サイトの「食べログ」での、やらせ投稿問題が大きなニュースになっていました。歯科でも、同じような問題があり、慎重な判断が必要です。

専門的な知識と技術を持ったドクターを見分けるのに、ネットの情報だけでは難しいように思います。矯正講習会で話を聞いただけで、実際の臨床実地経験が少なくても、過大な広告をしている可能性があります。自分と同じような症例で、実際に治したものを見せてもらうなどで判断するのが良いように思います。

日本矯正歯科学会等の認定医制度は信頼たる情報ですが、ドクターとの相性までは分かりません。数年間の通院を考えると、ドクターとの相性は非常に大事になります。治療自体にはさほど問題が無いのに、コミュニケーション不足から、トラブルになっているケースがあるようです。何でも相談しやすいドクターかどうかしっかりと判断する必要があります。

以上のことを判断するには、面倒でも、複数件の医院でカウンセリングを受けるべきだと思います。費用も期間もかかる矯正治療ですから、じっくり医院選択を行うべきでしょう。

ただし、評判が良くても、あまりに遠い所への通院は避けられた方が無難です。装置故障のトラブルや我慢できない痛みの発現等、近くの医院でないと対処が難しいからです。

《参照:歯列矯正をしたのに、歯並びが治らない!?

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