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1-6 子供の矯正治療の開始時期と終了時期について

早く矯正を始めれば、早く終わるは本当なの? 

矯正治療には色々なテクニックがあり、そのテクニックごとに様々な装置が使用されます。また、テクニックが違えば、治療に対する考えも変わってきます。更に、同じテクニックでも、ドクターの経験に応じて、その考えに若干の違いがあります。

子供の矯正治療に対しても、当然ながら色々な治療法・考え方が存在します。特に治療の開始時期に対して、次のような違いがあります。
①ほとんどが乳歯である時期からする方法(幼稚園から小学校の初め頃)
②乳歯の半分くらいが永久歯に交換してからする方法(小学生の半ば頃)
③全ての乳歯が永久歯に交換してからする方法(小学生の終わり頃)

私自身は、できるだけ非抜歯で治療してあげたいという思いから、②小学校半ばからの治療をお勧めする場合が多いです。歯列・顎の拡大を行い、歯を並べるためのスペースを作るためです。この時期は、自然な顎の広がりを期待できない一方、矯正装置にはよく反応して拡大が可能だからです。もし、歯列不正の程度が軽い場合には、③のように治療をできるだけ遅くするのが良いと思っています。つまり、治療期間をできるだけ短くするためには、可能な限り治療開始を遅らすのが良いと思っています。

①の場合ですが、この時期は治療をしなくても、ある程度、自然な成長による拡大を期待できますので、過剰治療になってしまう可能性があります。また、本格矯正に移行した場合、治療期間が長期間に及びます(下図の①')。したがって、私がこの時期から矯正治療を開始することは希です。

「『早く始めれば、早く矯正が終わります。小学校で矯正を終われます。』という話を聞いたのですが、本当ですか?」とよく尋ねられます。このことがもし本当なら、①のように乳歯列期から治療するのが一番良いはずです。軽度の歯列不正なら、早期からの予防的な拡大が成功し、エッジワイズ治療を受けなくても、早く終われる可能性はあります。しかし、このような場合はむしろ少なく、ほとんどのケースは中学生以降にエッジワイズ装置による本格的な治療を受ける必要があります(下図の①')。

治療の開始時期には3通りあることをご説明しましたが、子供の矯正の治療の終了時期にはバリエーションがありません。つまり大人の歯列が完成するまでなのです。それは、親知らずを除く28本の永久歯がキレイに並んで、しっかりと噛み合うことを言い、小学校の終わり頃から中学校の初め頃にかけて、12歳臼歯(第二大臼歯)が生えて完成します。この12歳臼歯は、すんなりとキレイな位置に生えてくることが少なく、かなりの確率で不正な位置に転位して生えてきます。たとえ予防的に拡大しても、キレイに生えてくることは少ないのです。そして、12歳臼歯を含んだ全ての永久歯を並べるために、更に約2年間のエッジワイズ治療が必要となるのです。つまり、いつの時点から矯正を開始しても、終わりの時期が一緒ですから、早く始めれば始めるほど、治療期間が長くなる可能性が高く、小学校で矯正を終了することは少ないのです。もし、かなり酷い歯列不正があったのに、小学校で治療が終了した人が周りにいるとしたら、第二大臼歯の位置を無視した治療の可能性があります。世の中に治療法は数多あれども、第二大臼歯の位置と噛み合わせを無視していいという治療法は絶対にないはずです。

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