- 従来の型取り(アナログ)
- 梱包して国際郵便で海外へ送る
当院で導入している口腔内スキャナ(iTero Element)についてご説明したいと思います。簡単に言えば、お口の中を高速に撮影して、歯列の状態を3次元的なデジタルデータとして記録する機械です。このデジタルデータを用いて、マウスピース型矯正歯科装置(マウスピース型矯正装置(インビザライン))や裏側矯正歯科装置(DW Lingual Systems)が作られます。
身の回りには、スマホ(スマートフォン)、デジタルカメラ、デジタルテレビなど、デジタル機器があふれており、だんだん便利な世の中になってきました。アナログ的な治療が主だった矯正歯科にもデジタル化の波がやってきており、便利で快適な矯正歯科に変わろうとしています(デジタル矯正歯科革命!)。それでは、どう変わったか具体的に順を追って説明していきます。
従来、歯列の状態を記録するためには、トレイに粘稠な材料を盛り付けて、お口の中に入れて採っておりました。嘔吐反射の強い患者さんにとって何よりも苦痛な治療でした。また、失敗する確率も高く、何度も取り直したりすれば、患者さんの負担は相当なものでした。また、ドクターや衛生士にとっても、患者さんに苦痛を強いることは、大変辛いことでした。順調に型取りできても30分以上もの時間がかかりました(アナログ的型取り)(図1左)。
当院でいち早く導入した口腔内スキャナ(iTero Element)では、型取りが根本的に変わりました。ワンド(手に持ってスキャンする部分)を口腔内に入れて動かすだけで、歯列を高速に撮影します(1秒間に6000回もの高速撮影)。この操作はたった数分で終わり、とても快適な型取りです。撮影した3次元的デジタルデータは極めて正確なものとなります。また、レントゲン撮影とは違うため被爆の心配もなく、型取りに使う材料を誤嚥する事もないので、極めて安全です。
このデジタルデータを海外のアライン社に送れば、従来の型取りと比べて精度の高いマウスピース型矯正装置(インビザライン)ができあがってきます。デジタルデータなので、インターネットを通じてあっという間に送ることができ、完成したマウスピース型矯正装置(インビザライン)が送られてくるまでの期間も短縮されました。以前は、採得した歯の型を梱包し国際郵便で送っていましたので、その期間短縮効果たるや、今すぐにでも治療を開始したい患者さんにとっては朗報となります(図1右)。
(図1 左)従来の型取り(アナログ)
(図1 右)口腔内スキャナ(iTero Element) (デジタル)
そして、更に凄いのは、デジタルデータなので、コンピュータで治療結果を計算でき、その場で映像としてシミュレーションできることです。これこそ矯正歯科に起こったデジタル革命ですよね!(図2)
ただし、その場で確認できるシミュレーションは、あくまで参考にするだけであり、正確な診断は、歯科医師である私がクリンチェックというソフトウエア上で行います。その診断結果を基に、実際のマウスピース型矯正装置(インビザライン)が作成されるのです。
(図2)
下顎左右第2小臼歯欠損と上顎前歯部叢生を伴う上顎前突症例(左)のシミュレーション
上顎左右第1小臼歯を抜歯して、上顎前突も叢生も解消されたところを示しています(右)