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3-13 忘れない思い出に残る歯列矯正を!

- 歯列矯正に関わる、『忘れること』と『忘れないこと』の意義 -

『人は忘れるから生きていける』

辛いことや悲しいことがあると、とても心が痛く耐えられない気持ちになります。しかし、それでも、生きてゆけるのは、忘れることによって、時間とともに、それらの記憶が薄らいで行くからです。先日、ある成人の患者さんが来られました。小学生から中学生にかけて、別の矯正歯科で歯列矯正をされたとのことでした、かなりの後戻りがあり、当院での再治療を希望されました。その時の矯正装置などを伺うと、ほとんど覚えていらっしゃいませんでした。痛みや見た目など、本人にとって、歯列矯正は辛かったに違いありません。親御さんに言われるがままの矯正だったのかもしれません。本人にとって、嫌な記憶として心の奥深くに封印されてしまったのかもしれません。しかしながら、嫌な記憶であっても、歯列矯正に再チャレンジできるのも、忘れるからこそ。この患者さんのお話しを聞いて、『忘れること』の意義を再認識しました。

しかし、『忘れること』が大事だからと言って、本当に、自分の受けた矯正治療を忘れていいものでしょうか?何年もの貴重な時間を費やした矯正治療、高いお金を費やした矯正治療。忘れてよい類いのものでは、決してないはずです。見た目を我慢し、痛みを乗り越えたからこそ、歯並びがキレイになったときの喜びはひとしおです。嬉しいなどの感情を伴った記憶は消えることはありません。昔の歯並びが悪かった頃の自分に戻りたくないと思うことも大事です。そのような感情を忘れないからこそ、歯を動かし終わった後の保定にもしっかりと取り組めるのです。歯列矯正に関しては、『忘れること』よりも『忘れないこと』の方が大事ではありませんか。

忘れないためには、何よりも自分自身の歯並びに関心を持つことが大切です。最初の歯並びはどうだったのか、どの歯が大きく動いたのか等、鏡をしっかりと見て覚えておくことが大事です。そうすると、段々とキレイになって行く歯並びを見て嬉しくなり、治療が楽しくなって行きます。矯正治療を楽しむことが『忘れないこと』となり、自分自身のモチベーションを維持しながら、ドクターの指示をきっちり守ることにつながるのです。その結果、治療が成功するのです。決して、親や他人の強制で、矯正は成り立たないのです。【子供さん自身が歯並びを気にしていますか?】というコラムも参考にして頂ければ幸いです。

さて、冒頭でご紹介した患者さんのように、大人の患者さんで、再矯正組の方はかなりの数いらっしゃいます。治療回数の多さで言えば、3度目の矯正(過去の2度の矯正は他院)という方がいらっしゃいました。不幸にも後戻りした場合には、再治療するしか方法はありませんが、できれば1回目の治療で後戻りすることなく完結といきたいでしょう。再矯正しないためには、技術的にしっかりとした医院を探すことも大事です。また、後戻りしないよう、しっかりと治療後の管理をしてくれる医院が大事です。治療後2年を過ぎると、その後は患者さんが希望しているにもかかわらず、管理してくれない医院もあります。治療開始の段階で、アフターフォローについて、しっかりと尋ねておきましょう。もちろん、治療後、まったくリテーナーをされなかったり、来院されなかったりする患者さんもいますので、後戻りについて、医院側ばかりに責任があるわけでありません。

技術面でしっかりとした医院を探すと言っても、患者さんにとっては、とても難しいことです。患者さん自身の歯並びとよく似ていて、実際にそのドクターが治した症例を見せてもらいましょう。「今なら、簡単に治ります」と言った類いの、耳当たりのいい言葉には注意をして下さい。これに関しては、拙者のコラム【歯列矯正をしたのに、歯並びが治らない!?】も併せてご覧下さい。

数年も治療に通うのですから、医院の技術面だけでなく、ドクターやスタッフとの相性も大事です。医院自体の全体的な雰囲気も大事でしょう。痛みや見た目の辛いことがあったとしても、忘れる対象としてではなく、楽しい思い出として記憶に残る医院でなければと思っています。なぜなら、歯列矯正という仕事の中身は、白い歯が輝く笑顔を作るお手伝いなのですから。

 矯正歯科を受診しているのだから、患者さんは皆、自分の歯並びに関心を持っていると思われるかも知れませんが、最初の歯並びを正確に覚えている方は意外と少ないものです。「良くなりましたね」とお声がけしても、「どこが変わりましたか?」と患者さんやその親御さんから質問される事があります。最初の歯並びを忘れてしまったので、どう良くなったのか判断できないのです。

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