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3-4 八重歯はかわいい? -機能を重視した本来の矯正治療

2011/2/25(金)に放送された『たけしのニッポンのミカタ!~噛まないアナタは損してる』をご覧になりましたでしょうか。日本に住む外国人からの疑問として、「日本人はなぜ八重歯をかわいいと思うのか?」というのがありました。

そもそも欧米では、八重歯のことをバンパイアティース(吸血鬼の歯)といい、縁起が悪いものとされています。八重歯を治さないと、貧しく育ちが悪いと見なされるため、必ず治すそうです。

それに対して日本人は、八重歯をかわいいと思い、アイドル歌手でも八重歯がチャームポイントとされていたりします。また、せっかく歯列矯正したのに、わざわざ"つけ八重歯(人工八重歯)"している女の子(読者モデル)の事例なども紹介されていました。

欧米では、左右対称のものなど、完璧に構築された美を求めるのに対して、日本人は、ちょっと崩れていたり欠けていたりといった破調の美を求めるからだと解説がありました。破調の美に関しては、日本人の誇らしい部分ではありますが、この八重歯に関しての美はいただけないと思います。当たり前のことではありますが、歯に関しては、美よりも機能が優先されるからです。

正しく機能的な歯並びとは、上下顎とも左右対称です。また、上下の歯の数は同じで、上顎の歯列は、下顎の歯列より一回り大きな相似形をしています。このような形態の場合、上下の歯が効率よく噛み合うのです。つまり、機能を求めれば、このようにとても調和のとれた形態となるのです。健康に生きていくためには当然の結果だと思われます。

仮に八重歯が左右対称的にあっても、機能的ではありません。下顎の歯列と調和できないからです。また、八重歯の特徴は、尖った先端でありますが、これは、そもそも全く機能していないことの証拠なのです。犬歯は本来、顎が側方に動くときのガイドとしての極めて重要な役目を担っています。正しく機能すると、食事や歯ぎしりで、先端は経時的に摩耗して丸くなっていきます。尖って目立つ犬歯をかわいく見せているつもりでも、国際的には魅せられたものでなく、「私の歯並びは正しく機能していません」と皆に宣言しているのと同じことなのです。

歯列矯正治療というと、どうしても美容目的になりがちですが、見た目を考慮しながら、機能を最大限に追求した結果としての治療とご理解頂きたいです。この原則から考えれば、例えば、八重歯を残しながら、噛み合わせをよくしたいとの希望があったとしても、それは無理な相談です。また逆に、奥歯の噛み合わせは無視していいので、よく目立つ前歯だけの矯正を行って欲しいとの希望も、この原則に反します。また、口元の極端な後退を目指して、必要のない抜歯を行うなど機能的にマイナスとなると分かっている矯正もよくありません。

つまり、機能を無視して審美面を優先させる治療は、とても中途半端な矯正治療であり、通常、そのような治療はあり得ないのです。

P.S.
人工八重歯とは、パーティグッズで売られているような、取り外し可能なものではありません。歯に接着して容易には外れないように固定されたもののようで、歯科医院で提供されています。仮に、噛み合わせに悪影響はありませんと謳っていても、歯が磨きにくくなりますし、口内炎にもなりやすくなりますので、自由診療としても、受けられる人が納得済みでも、同じ歯科医として疑問に感じます。

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