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3-14 歯並びの変化-後戻りについて

歯は生後6ヶ月から生え始めます。この時の歯は乳歯です。その後、2歳半で全ての乳歯(20本)が萌出し、乳歯列が完成します。また、6歳位から乳歯と交換する形で永久歯が萌出開始し、12歳で第二大臼歯が萌出する頃には全ての乳歯が脱落し、28本の永久歯が揃います。親知らずまで数えると永久歯は32本あるのですが、大人になっても親知らずが生えなかったり、先天的に欠如している場合も多いですので、12歳時、28本の永久歯が揃っている状態が永久歯列の完成となります。

歯列の完成と言っても、それぞれの歯の位置が固定化されるわけではありません。歯は歯槽骨の中に埋まっていますが、骨と癒着しているわけではなく、骨とは歯根膜を介して接しているだけです。つまり、押されれば動く可能性があるのです。たとえば、20歳頃に、親知らずが斜めに生えてきた場合など、手前の歯を押しながら萌出しますので、キレイな歯列であっても歪むことがあります。また、年齢を重ねると、アゴの骨が痩せて、徐々に歯列が歪んでゆきます。歯列が変化するということは、逆に考えれば、歪んだ歯並びをキレイな状態に矯正することも可能なのですが、残念ながら自然とキレイな歯列になることはほとんど有りません。

歯列矯正治療経験のない正常な歯列でも、年齢と共に変化するのですから、歯列矯正をした歯並びを一生維持するのは非常に困難なことなのです。以前より、矯正歯科の研究者たちは、矯正後の後戻りを起こさせないようにする方法を研究してきました。しかし、自然な状態にまかせて維持させるような方法は、残念ながら見つかっていません。将来、歯並びの変化を遅らすような薬ができれば、ほぼ解決するのかもしれませんが、今のところ、期待して待つわけにもいきません。

もちろん、歯列矯正後、歯並びを維持させるための戦略は存在します。リテーナー(保定床)と呼ばれる、取り外しのできる装置を、夜間にはめてもらったり、歯の裏側に、細くて違和感の少ない針金を貼り付けたりして、ほぼ後戻りを防げます。しかし、リテーナーの使用を止めると後戻りの可能性が再燃することもあり、場合によっては、半永久的に、歯並びを裏側から固定する必要もあるかもしれません。

『行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。口の中にある歯と歯槽骨と、またかくの如し。』。

P.S. 薬を飲んで歯の動きをコントロールする方法は、今のところ実用化されていませんが、もし、矯正治療中は歯を早く動かして、治療後は、動かないようにする薬がでれば、夢のような矯正治療が実現する可能性があります。私が大阪大学時代、歯の発生を研究していたのですが、同じ講座の先輩が、歯を早く動かす薬の研究をしていました。未だ実用化はされていませんが、特許は取得済みです。早く夢のような矯正が実現して欲しいものです。

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