歯列矯正用アタッチメント(クリアスナップ)とは
極めて優れた審美性と効率的な歯の移動を両立した
身体に優しい矯正治療装置です
「セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)に興味を持ったのだけれど、もう少し見た目のよい装置はありますか」とのお問い合わせを頂きます。そういう方に、私たちが自信を持ってお勧めしているのが歯列矯正用アタッチメント(クリアスナップ)を用いた矯正です。
歯列矯正用アタッチメント(クリアスナップ)とは、デンツプライシロナから製造販売されている乳白色(半透明)のキャップのことです。日本人の矯正専門医が歯の移動の効率化を求めて開発しましたが、日本人の審美的ニーズも最大限に考慮したため、とても見た目が優れています。
エッジワイズ治療において、各歯に接着する装置をブラケットといいます。このスナップは、ブラケットに被せて使用し、ワイヤーを軽く保持するだけで、“ゆるゆる”の状態で装着されています。従来は、エラスティックと呼ばれる矯正専用の輪ゴムや細い金属線でしっかりとワイヤーを縛り付けていましたが、このような構造のお陰で、セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)と同じく、ワイヤーとの間にほとんど摩擦力が働きません。
”ゆるゆる”な状態だと、歯の移動時においてブラケットとワイヤーの間に生じる摩擦力を極めて少なくできますので、とても弱い力で歯を動かすことが可能になります。
「力が弱いということは歯が動かないということでは?」との質問を頂くのですが、実は不思議なことに、弱い力の方が歯は速く動きます。弱くて持続的な矯正力が働いた場合に、歯が速く効率的に動くことが生物学的に証明されていますので、とても理にかなっています。
”ゆるゆる”の状態を、最近の矯正で注目されている言葉に言い換えると、『Low friction』と『Low force』になります。Low frictionとLow forceとは、セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)を代表とするセルフライゲーションブラケット(ワイヤーを縛り付ける必要のないブラケットの総称)で着目された概念です。つまり、できるだけ矯正器具による摩擦を少なくし、弱い力で歯を動かすことが望ましいとするコンセプトです。
Low frictionとLow forceのシステムでは、生理的に無理な力を用いませんので、とても身体に優しいのです。Low friction、Low forceというトレンドは一時的なものでなく、これからますます主流になっていくと思われます。
この装置のオリジナルは、同じデンツプライシロナから発売されているブラケット(クリアブラケットSL)という乳白色のブラケットと組み合わせて使用します。しかし、当院では、ブラケットの更なる耐久性・耐摩耗性の向上のため、TP Orthodontics社から発売されているブラケット(InVu)と組み合わせて使用しています。ブラケット(InVu)はとても歯の色に近い白色ブラケットで、審美性にも定評があります。また、ブラケット(クリアブラケットSL)と違い、一切金属部分がありませんので、当院でのこの組み合わせはとても審美性に優れています。
このスナップを使用すると、ブラケット上を通っているワイヤー部分が隠れますので、従来の審美ブラケット(セラミックブラケットなど)と比べて一段と審美性に優れています。さらに審美性を上げるためには、ホワイトワイヤーの使用をお勧め致します。下の写真を見て頂ければ分かりますが、スナップ+ブラケット(InVu)+ホワイトワイヤーの組み合わせでは、前から見える範囲が全て白色になり、裏側矯正(リンガル矯正)と比べて遜色ない審美性が得られます。
このスナップの材質はポリアセタールでエラスティックに比べて変色しにくいため、いつまでも白くてキレイです。また、この材質は、歯垢が付着しにくいため、清掃性にも優れています。
セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)と開発コンセプトが似ていますので、メリットもよく似ています。しかし、材質の違いのせいか、歯の動きに多少違いがあるようです。また、クリアスナップは後から装着するフタであり、デーモンシステムのようにフタとブラケットが一体になった構造ではありませんので、ブラケットとスナップの間にあそびがあります。つまり、このあそびが原因となって、ワイヤーをブラケット内の定位置にとどめる力にロスがあり、歯の捻転の改善が遅くなります。これらの理由により、歯列矯正用アタッチメント(クリアスナップ)を用いた矯正は、セルフライゲーションブラケット装置(デーモンシステム)より、治療期間が多少余分にかかります。しかし、見た目の美しさはこちらに軍配が上がります。
《文責:柴口竜也》