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1-9 高校生の患者さんが少ない!?

- 高校生からの歯列矯正をお勧めする理由 -

日日診療していて、ずっと気になっていたことがあります。『高校生の患者さんが少ない!?』のではということです。中学生から矯正を開始して、今現在、高校生になっている患者さんを含めてカウントすると、高校生が極端に少ないわけではないのですが、高校生の初診患者さんや、高校生から治療を開始する患者さんが少ないとの実感がありました。

そこで考えつくのが、歯列矯正が必要な子供の場合、中学生までで、ほぼ治療し尽くしたのではという可能性です。親御さんが子供さんの歯並びを気にしている場合、小学校で治療開始している人が多いという事実があります。また、乳歯が全て永久歯に生え代わってからでないと矯正ができないと思い込んでいる親御さんの場合や、矯正治療は永久歯列が完成してからが望ましいと、かかりつけ歯科医からアドバイスを受けている場合は、中学生になってから開始しているという事実があります。しかしながら、20歳以上の成人矯正患者さんが34%もいることを考えると(【30歳からの歯列矯正】というコラムを参照)、高校生で未治療の人は多いはず。また、アメリカでは、90%もの人が矯正治療を受けているのに、日本での治療経験者はたった10%という事実から考えても、潜在患者さんは多いはずです。

そこで高校生から治療を開始した患者さんの割合について調べてみました。円グラフをご覧下さい。これは、患者さんを、矯正治療開始時の年齢によって、小学生、中学生、高校生、短大・大学生、23歳以上の5つに分類し、その割合を示したものです。その結果、高校生は6.0%と一番少ないことが分かりました。小・中学生(合わせて58.1%)が多いのは当然としましても、短大・大学生(7.9%)と比べても少ないのです。やはり、実感と違わないことが分かりました。

歯列矯正専門の歯科医院に来院される患者さんは、気持ちの面から考えて、次の3つに大別されます#1。 
①自分自身はさほど気にしていないが、親御さんが子供さんの歯並びを気にしている。
②自分自身が気にしている。しかし、矯正装置の見た目や痛みなど、色々と気になることがあり、それらを納得できないのなら矯正治療を考えられないかもしれない。
③自分自身が気にしている。矯正装置の見た目や痛みなど、色々と気になることはあるが、治したいという意志の方がはるかに上位にある。

小学校低学年の児童や幼児はほとんどが①に属します。せめて②になるまで、治療を開始すべきでないと、私は考えています。できれば③の状態が望ましいのは言うまでもありません(【子供さん自身が歯並びを気にしていますか?】のコラムを参照)。前回のコラム(30歳からの歯列矯正)で、30歳代は、自分で稼いだお金で矯正治療を始めるため、とても協力が良く、治療が成功する可能性が極めて高いことを述べました。つまり、30歳以上の患者さんは、ほとんどが③なのです。さて、中・高生ですが、ほとんどの方は②だと思います。この場合、治したい気持ちと、見た目や痛み等の懸念材料を天秤にかけて判断しています。中学生(10.7%)より、高校生(6.0%)の方が少ないのは、高校生の方が、懸念材料が多いからだと思います。

②の高校生は初診相談に来ても、懸念を払拭できなければ治療を始めません。そもそも初診相談にすら来られない可能性が大です。というのも、高校生が少ないと言うことは、そもそも周りに矯正している友達がいないかもしれないと言うこと。矯正していた友達は、既に中学生で治療を終了している可能性があり、今更感を持っている可能性があります。

懸念材料で代表的なものとして、先ずは、痛みの問題があります。矯正治療は残念ながら痛みを伴います。矯正経験者が友達に痛みを伝える場合、多少オーバーに表現する傾向があるようです。それを真に受ければ、矯正治療に恐怖すら感じてしまいます。また、矯正治療では、歯を抜くことがあるため、絶えられないような痛みを想像してしまいがちです。しかし、痛みが原因となって治療を断念された方は今までいなかったことや、抜歯時には、麻酔をして無痛下で抜くこと、麻酔が覚めても、鎮痛剤を飲めば1日ほどで痛みがなくなることを説明すれば、たいていの場合、痛みへの懸念は解消されます。ただし、初診相談にも来られない場合、この懸念が払拭される機会は残念ながらありません。

次に、高校生にとっての一番の懸念は、やはり見た目の問題でしょう。中学生より治療率が少ないのも、まさしく、このことが原因です。服装など身だしなみが気になるお年頃。お洒落をしたいのに、表から見えてしまう矯正装置はありえないと思っているのかもしれません。表から見えない裏側矯正もありますが、治療費が高いのがネックになっている可能性があります。

大学生になって7.9%と治療率が上がりますが、何も矯正装置の見た目の悪さが払拭されたからではありません。歯並びが悪い方が見た目に問題があり、それは、服装や化粧などでごまかせる問題ではないこと。また、ガタガタした歯並びによる笑顔が他人によい印象を与えないことなど、他人の目を通して、自分を客観的に見つめられるようになったからかもしれません。高校生までは、自分の目を通しての主観的な自分にのみ意識がいっていたのだと思います。就職を前にして、自分にとって本当に大事なことは何なのか見つめ直した結果かも知れません。

せっかく治療率の上がる大学生ですが、矯正治療は2年半前後かかるため、卒業までに治療が間に合わなかったり、急に海外留学やワーキング・ホリデーがしたくなったりと、治療の継続が問題となることがあります。就職で遠方へ転居した場合、月一回程度の来院でも難しくなります。海外では尚更です。転医となれば、転医先を探すだけでも大変で、治療が長引いたり、費用がかさんだりと、何かと問題が生じます。大学時代は、ライフスタイルの変化が最も激しい期間です。2年後の変化を正しく予測することは不可能でしょう。予測不能なライフサイクルの変化に対応するには、何事も、早め早めと手を打つより他にありません。そのためには、大学に入ってから治療を開始するより、高校生の間に治療を開始するべきだと思います。もちろん、遠方の大学に行く計画があるのなら、更に早めて、中学生の間に治療を開始すべきでしょう。

以上では、高校生が心理面で歯列矯正治療を躊躇している実態について述べました。また、ライフサイクルの早い変化に対応するためには、高校生からの治療が望ましいことを説明しました。しかし、遠くへ転居する可能性が極めて低く、海外にも興味を持っていない高校生の心には響かないかも知れません。最後に、高校生からの矯正治療では、歯を抜かない非抜歯矯正が可能となるかもしれない、生物学的利点があることをご説明しておきましょう。

高校生では、歯を支えている骨(歯槽骨)が硬くなって、側方拡大が難しく、これまでは非抜歯矯正が難しいとされてきました。しかし、最近では、歯科矯正用アンカースクリューを使った大臼歯の後方移動(専門用語では、遠心移動と言います)が可能になり、非抜歯矯正の可能性が格段と上がってきました。歯科矯正用アンカースクリューは骨が軟らかいと抜けやすく中学生にはあまり向きません。高校生の方が抜けにくく安定が良いのです。成人の方がより抜けにくいのですが、高校生を過ぎると、上顎の親知らず(第三大臼歯)が下りてくるため、第一・第二大臼歯の後方移動が難しくなります。つまり、大臼歯の後方移動を総合的に考えるとき、高校生が最も適しているのです。もちろん、大臼歯の後方移動だけで、全ての高校生が非抜歯矯正できるわけではありませんが、その可能性が広がったのは紛れもない事実です。

高価な裏側矯正でなくても、表側から、白色セラミックブラケットやホワイトワイヤーを使用すると、見た目の問題は、ほとんど解消されたように思います(右の写真)。学校で友達より、「あまり目立たないね」と好評を博しているようです。 案ずるより産むが易しです。一人で悩んでも何も解決しません。先ずは、矯正専門医に相談される事をお勧め致します。また、進路やライフスタイルの変化といった将来の大いなる可能性を狭めないためにも、非抜歯矯正の可能性を狭めないためにも、高校生からの歯列矯正をお勧め致します。

#1 矯正歯科への来院の動機として、学校歯科健診で指摘されたから、かかりつけ歯科医に指摘されたからということがあります。そのような場合で、その中のほんの一分の方ではありますが、患者さん、親御さんとも、できれば矯正はしたくないと最初から決めて、治療しない理由探しのために来院される場合があります。このような場合は非常に少なく、この3つの分類には入ってきません。

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