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1-14 矯正装置により日常生活に支障が生じるのか?

― 矯正治療による、食事・歯磨き・吹奏楽・運動・勉強への影響について ―

矯正治療を考えられている患者さんにとって、矯正装置によって日常生活へ悪影響があるかどうか非常に気になるところだと思います。見た目や痛みといった問題の次くらいに気掛かりなことでしょう。

口にまつわる日常生活と言えば、食事、歯磨きでしょう。これらに、矯正治療はどのように影響するのでしょうか。また、吹奏楽部の学生さんにとっては、楽器の演奏も日常生活に含まれるでしょうか。口とは直接関係ないかもしれませんが、スポーツとの関係を気にされる方も多いです。吹奏楽、スポーツといえば、学生さんにとってクラブ活動に制限が生じるのではとの懸念をもたれているようです。また、学生さんにとっては、勉学への影響も気になるところでしょう。

矯正装置には取り外せる装置と取り外せない固定式装置があります。取り外せる装置の場合、日常生活への悪影響はほとんどありません。なぜなら、食事と歯磨き時には必ず取り外しますし、スポーツや楽器演奏時にも外して問題ありません。どうしても外したいと思うときがあれば、いつでも外すことができるため、日常生活に支障は生じにくいのです。ただし、あまりに外している時間が長いと、当然ながら目的の治療効果は得られませんので、外すのは最小限と心得て下さい。

取り外せない固定式装置の場合、食事に少し影響がでます。基本的には何を食べても問題ないのですが、食べ方に注意をして頂きたいと思います。例えば、堅焼きせんべいを勢いよく噛むと、装置に瞬間的に過剰な力がかかり、壊れて外れてくる恐れがあります。氷や飴をガリッと噛んでも破損・脱落の可能性があります。歯を動かせるための矯正力をかけた治療直後の場合に、このような瞬間的で過剰な力がかかると、猛烈な痛みを伴うこともありますのでますます注意が必要です。ただし、せんべいでも手で小さく砕いてから食べるとか、氷・飴なら良く舐めて食べるとかの工夫をすれば問題ありません。以前、修学旅行で、カニの殻をむかずに食べてエッジワイズ装置がほとんど外れた患者さんがいました。旅行中のため応急処置もできず、せっかくの旅行を楽しめなかっただろうと思います。

以上の食物以外では、ガムなども気になるのではないでしょうか。以前、ガムは矯正装置に絡みつくし、糖分が虫歯の原因になるため、食してはいけないものとされていました。しかし最近は、シュガーレスでむしろ虫歯予防になるキシリトール・ガムがありますので、このようなものなら噛んでも構いません。また、ガムを噛むことにより、しっかりした噛み合わせをつくる効果もありますので、むしろ推奨されている矯正医も多くいます。私も、ガム噛みを治療へ積極的に取り入れています

取り外せない固定式装置の場合の歯磨きですが、一番注意して頂きたい問題です。当然ながら歯磨きがしにくくなりますから、虫歯になるリスクはとても強くなります。特に、歯の表側は唾液で食物が自然に流れる作用が弱いこともあり、装置の周囲に歯垢がつきやすくなります。せっかく矯正で歯並びがキレイになっても、虫歯になっては台無しですから、しっかりと歯磨きを行う必要があり、特に歯磨き時間を十分にとって欲しいと思います。

次に吹奏楽への影響ですが、問題が全然ないわけではありませんが、クラブ活動に支障が出る程ではないと思います。楽器を吹くと唇に力が入り、唇の裏側が装置に当たって痛みが出ることもあります。しかし、徐々に慣れて痛みはマシになっていくと思います。また、装置をカバーして痛みが出にくくなるような装具もあります。プロの演奏家の矯正も行ったことがありますが、大きな問題もなく治療できております。

スポーツの場合ですが、ボールの顔面への直撃や格闘技の打撃により、矯正装置で口の中を怪我しないよう注意が必要です。ただし、矯正装置がなくても、スポーツに危険は常に伴います。矯正装置自身がスポーツ活動へ支障を及ぼすことはほとんど無いと思います。

最後に勉学への影響について述べておきます。矯正治療には痛みがつきものですが、その痛みは短期的で治療期間中に永続するものではありません。また、その痛みは食事の時が主で、限定的です。つまり、短期的には集中力などへの影響は否定できません。しかし、成績にまで響くような影響は考えにくいのです。今まで多くの受験生の矯正治療を行いましたが、何の問題もありませんでした。ただし、念のため、受験や定期試験の直前の受診は控えてもらっています。

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